ホップとは?クラフトビールの香りと苦味を生む原料をビアソムリエが解説

クラフトビールの個性を語るうえで欠かせないのが、ホップです。
IPAの華やかな香りも、ラガーのすっきりした苦味も、ホップの使い方によって生まれます。

この記事では、ホップとは何か、どんな役割を持っているのか、IBUとの関係、香りの種類、 そして醸造の中でどのように使われるのかまで、ビアソムリエの視点でわかりやすく解説します。

テーマ:ホップ解説 対象:初級〜中級 注目:香り・苦味・醸造工程

ホップとは?

ホップは、ビールの香りや苦味を生み出す植物です。ビールの主な原料は 麦芽・ホップ・酵母・水の4つですが、その中でもホップは ビールの印象を大きく左右する存在です。

ビールに使われるのは、ホップの雌花であり『毬花(まりはな)』と呼ばれています。毬花の中には、ルプリンと呼ばれる黄色い粒子があり、そのルプリンには、苦味や香のもととなる成分が含まれています。ホップはクラフトビールの個性をつくる重要な役割を担っています。

たとえば、柑橘のように爽やかな香り、トロピカルフルーツのように華やかな香り、 ハーブや草を思わせる落ち着いた香りなど、ホップの種類や使い方によって表情は大きく変わります。

ホップの役割

ホップには、大きく分けて4つの役割があります。

  • 苦味をつける
    麦芽の甘みを引き締め、ビール全体のバランスを整えます。
  • 香りをつける
    柑橘、トロピカル、フローラル、ハーバルなど、多彩な香りを与えます。
  • 防腐効果をもたらす
    ホップにはビールの保存性を高める働きがあります。
  • 泡もちを助ける
    泡の安定にはタンパク質なども関わりますが、ホップに含まれるタンパク質成分もその一部に関与しています。

クラフトビールの世界では、ホップの役割の中でも特に 苦味と香りが注目されることが多く、 ビールのキャラクターを決める大きな要素になっています。

苦味の指標「IBU」とは?

ビールの苦味を表す指標としてよく使われるのが、IBUです。 IBUは「International Bitterness Units」の略で、数値が高いほど苦味が強い傾向があります。

ただし、実際の「苦く感じるかどうか」は、麦芽の甘みやアルコール感、香りとのバランスでも変わります。 そのため、IBUはあくまで苦味の目安として見るのがおすすめです。

IBUの目安 イメージしやすいスタイル
10前後
ベルジャン・ホワイト
20前後 ピルスナーなど。大手市販ビールはこのくらい
40前後 IPA
60以上 West Coast IPA

たとえばIPAはIBUが高めのものが多いですが、ホップの香りが豊かだと、 数字ほど尖った苦味に感じないこともあります。

ホップの香りの種類

ホップの魅力のひとつは、香りの多彩さです。品種によって香りの系統はさまざまですが、 初級〜中級の方は、まず大きく5つのタイプで捉えると理解しやすくなります。

香りタイプ 香りのイメージ 代表的なホップ
柑橘 グレープフルーツ、ライム、レモン Citra、Cascade
トロピカル マンゴー、パッションフルーツ、パイナップル Mosaic、Galaxy
フローラル 花、蜂蜜のようなやわらかな印象 Hallertau
ハーバル ハーブ、スパイス、落ち着いた香り Saaz
グリーン 草、松、樹脂っぽさ Simcoe、Chinook

ホップ香りマップ(5タイプ)

                トロピカル

         柑橘               フローラル

         グリーン            ハーバル
      

このように香りの系統をざっくり把握しておくと、 「自分は柑橘系が好き」「ハーバルなラガーが好き」といった形で、 ビール選びがしやすくなります。

ホップの使われ方は大きく2つ

ホップには、大きく分けると ビタリングホップアロマホップの2つに整理できます。

ホップに含有されるアルファ酸量によって、使われ方で大きく2つに大別することができます。
しかしながら、ビタリングホップを香り付けに使うことも出来ますし、アロマホップを苦味づけに使用することもあります。

  • ビタリングホップ
    主に苦味をつけるための使い方です。煮沸の早い段階で加えられることが多く、 ビールの骨格を整えます。
  • アロマホップ
    主に香りを引き出すための使い方です。煮沸の後半や発酵後など、 香りを残しやすいタイミングで使われます。


ホップの使用方法と醸造工程

ホップは、醸造工程の中でどのタイミングで使うかによって、 苦味の主役にも、香りの主役にもなります。

ビールの製造工程とホップの使用方法

糖化 → 煮沸 → ワールプール → 発酵 → 熟成

        │       │            │
        │       │            └ ドライホップ
        │       └ レイトホップ / ワールプールホップ
        └ ケトルホップ
      

苦味と香りの関係

苦味 ←────────────────→ 香り

煮沸初期        煮沸後半        煮沸終了後        発酵後
ケトルホップ → レイトホップ → ワールプール → ドライホップ
      

主な使用方法は次の通りです。

  • ケトルホップ
    煮沸中に加える方法です。主に苦味をつける目的で使われます。
  • レイトホップ
    煮沸の後半で加える方法です。苦味をつけすぎず、香りも残しやすくなります。
  • ワールプールホップ
    煮沸終了後、まだ熱い麦汁にホップを加える方法です。香りをしっかり引き出したいときに使われます。
  • ディップホップ
    発酵前の熱い麦汁を利用してホップの香りを引き出す方法です。比較的新しい技術として注目されています。
  • ドライホップ
    発酵中または発酵後にホップを加える方法です。苦味をあまり増やさず、華やかな香りを強く出せるのが特徴です。

IPAで香りが豊かな理由のひとつは、このワールプールホップやドライホップといった 香りを活かす工程が積極的に使われているからです。

代表的なホップ

最後に、クラフトビールでよく見かける代表的なホップをいくつか紹介します。 ここを入口にして、今後は個別のホップ記事へつなげていくと、 さらにビール選びが楽しくなります。詳しくは各リンクから

  • Citra
    柑橘やトロピカルフルーツのような香りで人気のホップ。IPAやHazy IPAで定番です。
  • Mosaic
    トロピカル、ベリー、柑橘を思わせる複雑で華やかな香りが特徴です。
  • Cascade
    グレープフルーツのような柑橘香で知られる、アメリカンクラフトビールを代表するホップです。
  • Nelson Sauvin
    白ワインや白ぶどうを思わせる独特の香りで人気があります。
  • Galaxy
    パッションフルーツのような南国感ある香りが魅力のホップです。

ホップを知ると、ビールの味わいの見え方が変わります。 「このビールはどんなホップを使っているのだろう?」という視点で選ぶと、 クラフトビールはもっと楽しくなります。

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